拝啓、患者様

えらそうに看護師に接してくる患者は、病棟にどのシーズンでも一人や二人、いるのではないだろうか。寝たきりにも関わらず、身体は動かないにもかかわらず、口だけはよく動く。威張り散らした、「患者様」として、わたしたち看護師に接してくる。

そんな中、わたしは不謹慎でアブノーマルな看護師なので、心の中でこう思う。

「その気になれば、寝たきりのお前なんか首絞めて殺せるんだぞ」と。

「むしろ、なんで危害を加えられないと思って、のうのうと入院していられるんだ?」

と。やはり、手放しに看護師の善性を信じ込んでいるのだろうな、と思う。

都合のいい小間使いがいる。と思っているんだろうな、と思う。

そんな中で、わたしは、貴方、わたしの頭の中で何回か死んでますよ。と思って接している。

 

友人が、腎臓内科と神経内科の混合科という地獄の巣窟のような診療科で働いているが、タフな友人でも最近は明らかに疲れ果てている。

看護師の皆さんなら察してくれると思うけれど、この二つは神経質なこだわりの強い患者にわがままで自己管理が出来ない患者が多数存在する傾向が強い診療科。

ものすごーく注文のつけてくる患者がいて、きちんと全てに対応しているのにも関わらずに「あなたに対応されたくない」「もうベッドサイドにこないで!」等暴言を吐かれたらしい。さすがに友人もかちんときたらしく、去り際に、「人に面倒見てもらっておいてそれはない」と言い捨ててベッドサイドから離れたそうだ。

「その後は?」とわたしが訊ねると、「なんか、コールしてこなくなった。おとなしくなった。」と話していた。

きっと、何でもはいはい、と聞いてくれると思い込んでいた患者様(笑)サイドは面喰ったのだろう。患者たちよ、看護師に反撃をされないと思ったら大間違い。

看護師もただの一人間。イライラもするし、怒りたくなるときもあるものだ。

 

点滴に薬品を入れて、次々に患者を殺して行った大口病院のニュースを皆様ご存じだろう。理由としては、「死んだ時にその説明を家族にするのが嫌だったから」という驚きの理由だったけれど、確かに自分の勤務帯にステルベンに当たったら、「あー、引き当ててしまった」感が強いのではないだろうか。DNARならば医師を呼んで、死亡確認をしてもらって、家族を呼んで、死後の処置をして・・・等、他に何人患者を受け持っていようが、やることがたくさんある。確かに、自分の受け持ち時に死んでほしくはない。よし、だから自分の勤務時間じゃない時に死ぬように調整しよう!とはならないけれど、追い詰められて疲れ果てた一人の看護師の末路だったのだ、と思えばとても物悲しい。一人ひとりの看護師の絶望の仕方は、やっぱり違うのだ。同じ看護師でも、全てに共感する事は難しいけれど、一般職者の感覚からすると、やはりこの看護師はとんでもない殺人鬼、頭のおかしい看護師で終わってしまうのだ。

そんなことをするなら、仕事辞めればよかったのに。そういう単純な話ではない。

辞めたいといったらもったいない、とか言ってくるのは看護師でないあなたたちです。

病院は常に深刻な人手不足。病院側の強引な引き留めもあったのかもしれない。

環境もものすごく悪かったのかもしれない。いろんな要素があって、そうなってしまったのだろう。

この看護師の顔も報道されていたけれど、冴えない地味な女性だった。

あまり周りと喋らない、何を考えているのかよくわからない、等とインタビューで同僚たちに言われていた。

少し、ドキッとした。少しの居心地の悪さを感じる、むずむずした気持ち。本能的に、きっとわたしも何か事件を起こしたらこう言われるんだろうな、と思った。

この看護師は未来のわたしなのかもしれないな。そうなる前に、看護師からは足を洗おう、と自分の中で決めた。すでに今も結構にしんどいけれど。

 

最後に患者様たちに一言言っておきたい。

入院したからと言って、安心ではないですよ。すべて面倒をみてくれる楽園ではないですよ、いつ寝首をかかれるかわからない中でよく入院継続されていますね。簡単に人を信用できて、素晴らしいと思います。わたしは、とてもじゃないけれど、入院はしたくないですね。